屋根材と屋根勾配は互いに関係ある。わらはどちらかといえばきつい勾配を必要とし、スレートや溝つき瓦は緩い屋根勾配を許容する。ドイツ南部においては、3倍もの降雨量と強い風をもつ北ドイツよりも緩勾配で粘土瓦を葺くことが可能である。かつて、その土地における屋根葺き材は、屋根形状にとって決定的な役割を演じていた。どの屋根葺き材に対しても、いわゆる基準となる屋根勾配があり、例えば平瓦30度、有孔桟瓦屋根25度、桟瓦屋22度といった具合である。この基準勾配を下回るときには、屋根下地材が当然必要になる。
使用に際して区別されるのは、硬質で、燃えない屋根材(瓦、スレート等)と軟質で、燃える屋根材(わら、こけら)である。根本的に、屋根表面は飛び火や放射熱に対して抵抗性をもつ必要があり(硬質屋根材)、燃える屋根材の場合、隣接建物との距離を十分とる必要がある。
木材の豊富な地方においては、「こけら葺き」屋根が生まれ、15~80度の勾配に適している(例えば教会の塔の屋根)。北ドイツにおいては、アシやカヤが屋根材として用いられ、天然スレートが産出する地方においては、天然スレート板が用いられてきたが、今日見ることは稀であり、それに代わって釘で固定された、薄いスレート板の屋根材(最低勾配25度)に引き継がれた。
ビーバーのしっぽ瓦の並べ方と施工(Dudenより)
左と中央はビーバーのしっぽ瓦の並べ方の二例。左は表面、中央は裏面の突起が見えている。右はフライパン瓦。
中部ヨーロッパにおいて最も用いられる屋根材は粘土瓦であり、平瓦(ビーバーのしっぼ瓦)や雄瓦・雌瓦の屋根は最も古瓦形状を代表している。今世紀初頭より、産業の発展は平桟瓦(フライパン瓦)や溝つき瓦を開発することで、より単純に、より多彩に用いることを可能にした。すなわち、かって平瓦の勾配として36度以上必要であったのに対して、溝つき瓦はその製品によっては最低勾配20度から使用できる。波うつ曲面屋根は、平瓦(ビーバーのしっぽ瓦)でのみ葺くことができる。
今日屋根瓦は「セメント瓦」によって著しい競争を強いられるようになった。安く製造でき、形状としては50%大きく、いくらか重いセメント瓦は、10年前までは灰色の商品しか流通していなかったが、今日赤い瓦色も入手可能であり、素人には本物の瓦と区別できないほどである。また施工の手間がかかり、小さなパーツからなる屋根瓦に対して、ルーフィングシート、ビチューメンの波板、繊維セメント波板、亜鉛メッキ鉄板のような屋根材も広く出回っている。しかし、これらの屋根材の欠点も少しずつ明らかになっている。
ビーバーのしっぽ瓦を葺くにはモルタルを用いる。
すなわち、
●板張りの上のルーフィングシートは、最も安価であり、陸屋根にも適しているが、メンテナンスに費用がかかり、しかも寿命が短い。そのため代替品として合成樹脂による溶着シートの開発に至った。寿命は10~20年である。
●ビチューメン波板は10~15年の耐用年数しかない。
●セメント繊維板は、健康を害するアスベストセメント板の代替品である。合成繊維を含んだこの代替材が、アスベスト板と同様の問題、すなわち材の劣化による亀裂の形成、亀裂部分の凍結から板そのものの破壊を起こすか否かは、使用されてからまだ日が浅いためによくわかっていない。
●トタン板は腐食しやすく(しにくいのは銅、純粋な亜鉛板)、雨やヒョウのときには騒音原因となる。気温の大きな変動によって生じる材料自身の伸縮のために、注意深い施工を必要とする。水密性を保つことはそれでもなかなか困難である。
●屋根緑化は今日ルネサンスをむかえている。建築による度を越した草原や畑の喪失を考慮すると、特に都市部において、屋根緑化することは有意義なことである。雨水の濾過と保持のためにも、下水への放流に対するエコロジカルな代替として、屋根緑化は大変具合がよい。工場建築などの陸屋根の場合、屋根の緑化はは義務づけられるべきであろう。
屋根材を敷いたその下地は、侵入した湿気と水蒸気が取り除かれるように、通気できるようにすべきである。
瓦桟、捨桟によって、屋根下の通気面が生み出され、遮ることなく軒から棟まで通気できる必要がある。このゾーンがドーマーウインドーないし煙突によって中断される場合、給気排気のための開口が必要である。
用いられる材料にかかわりなく、屋根面は、慎重に施工しても弱点となるので、できるだけ穿孔のないことが望ましい。
緑化屋根