屋根工事

屋根構造例

付加的な断熱をもつ断熱屋根

付加的な断熱をもつ断熱屋根
屋根下に二層の通気層をとると、垂木間の断熱層を13cmに抑える必要があり、その結果垂木間の断熱材によってだけでは、十分な断熱効果を生み出すことはできない。
それゆえ、付加的な断熱材が垂木の下に、パネル材(木質繊維断熱パネル)によって施工される。主たる支持構造に直交するように配置し、この層は屋根垂木を断熱する。重いパネルは遮音性能をも高め、夏の熱負荷対策にもなる。

セルロースファイバーを用いた垂木間断熱

断熱材を吹き込んだ通気層のない屋根
ルーフィングシートを張った板張りの代わりに、ビチューメンを含んだ軟質の木質繊維板を用いると、透湿性のある構造体がつくり出される。この場合は16cmのセルロースファイバーが吹き込まれる。
室内側に張られた軟質の木質繊維板は必ずしも必要というわけではないが、断熱材にとって安定した空洞空間をつくり出し、防風紙、防湿シートもその上にうまく止めることができる。

断熱層と内側に蓄熱のための有孔粘土パネルを用いた屋根

断熱層の上に通気層のある寒冷地用屋根
この構造の場合、垂木の間に4cm厚さの有孔粘土パネルを充填するために、屋根荷重は108kg/㎥に増す。屋根の構造は、断熱性能、蓄熱性能(夏の熱負荷)ともに、大変良好な値を示す。重い構造は、調湿性能もよく、それゆえ、防湿シートは必要ない。

後に粒状断熱材を充填した屋根

垂木下に断熱材を吹き込んだ屋根
この施工は、特に屋根の改修に適している。垂木の間に、内側からの流し込み断熱材、もしくは吹き込み断熱材が採用できるからである。十分な断熱層の厚さを保持するために、垂木に受け桟を取り付ける。流し込み断熱材としては粒状コルクが、吹き込み断熱材としてはセルロースファイバーが適している。流し込み断熱材の場合、時間とともに屋根の棟において、断熱材が沈下し空洞が生じるおそれがあるので、1年後には調節すべきである。水蒸気の負荷にさらされる居室の場合、防湿シートを居室側に、断熱層の前に配置しなければならない。天井仕上げは、石膏紙張りボード、上塗りされた木毛軽量板わらボード、もしくは板張りによる。

垂木を露出させた屋根

垂木を露出させた屋根
2~3cm厚さの露出の板張りの上に防湿シート防風紙が全面に張られ、継ぎ目は接着される。断熱材として、炭化コルクボード、アシボード、軟質の木質繊維板が数枚敷設される。断熱層の外部の被覆として、同時に水を受ける層として、最も単純な場合、防水処理を施した耐裂性のあるシート、もしくはビチューメンを含んだ軟質の木質繊維板が用いられる。瓦桟は、垂木と一体となるように釘打ちする。軒先では付加的に、屋根材のずれを防ぐための措置が必要である。瓦桟は屋根材の下でより多く熱を排出するために、少なくとも高さ5cmは必要である。屋根垂木は室内に露出され、それによって意匠的に分節された天井空間となる。

補遺:快適な室内環境をつくり出す技
熱帯地方やその小さな島々の気候帯においてのみ、私たちは衣服を調節することなく、年を通して外部ですごすことができる。このような地を、17世紀の発見者は「至福の島」と名付けた。楽園に関する逸話は南太平洋の島々への冒険へと人々を誘った。
さほど理想的とはいえない気候風土においては、何千年もの時の流れの中で、一連の建築構造と技術設備が発展し、それによって耐えられない外部環境は、心地よい室内環境へと変化した。建設と住むという行為に対する最も大切な原理は長い間、可能な限り出費を抑えることにあったといえよう。日常の建築はそれによって環境に対して正当なものとなる。それは、気象状況や、建設地、そしてその場の特性(ゲニウス・ロキ)に関する考察が建築のプロセスに包含されていたことを意味する。

 

こうした環境に沿ったバナキュラー建築の例としては、風塔と噴水をもった北アフリカの土の建築、雨を集める陸屋根をもったギリシャやイタリアの島々の石造建築50cmの壁厚をもった北アドリア海沿岸、中部イタリアにおける雄瓦、雌瓦の屋根の石灰岩の建築、左官仕上げのカッヘルオーフェンをもったアルプス地方のこけら葺き木造ブロック建築、オークの木造軸組と土壁でできた尖塔の棟をもつ中部ドイツの木組みの家、華やかに彩られた板張りをもつ北欧の木造軸組建築などがある。
場所の所与性、さらに伝統的な建築形態や建材が絶えず過少に扱われることになった「近代建築」の基礎は、交流電気の発見(19世紀末)と自由な運搬が可能になったことによる膨大なエネルギー消費によって築かれた。1920年以降、石油と天然ガスの活用に至り、豊かな工業国へのその運搬が付け加わった。それによって、工業的な製造ラインをともなう「純化された」建材がつくり出され、照明、暖房、冷房のために、絶えず手間暇のかかる技術が導入された。石油危機と、成長の限界に関する出版物などによってはじめて、工業国家は自己の浪費を思慮するようになったのである。

今日、巨大なエネルギー消費を抑えるために、様々な方法が取られている。第一の道は複合的な問題に対する一元論的な解決として、熱の封じ込めであろう(断熱化の道)。それは単純な数字の遊びで効率をほのめかす立法者を助け、断熱材や断熱ガラスの製造メーカーに対して二桁の成長率を生み出すだけである。第二の道は暖かさや涼しさのより効率的なエネルギー生産である(技術革新の道)。つまりソーラーコレクターシステムやコジェネレーションシステム等と連動させた貯湯ボイラーの分野の刷新と結ばれつつ、完全暖房と、いつでもお湯が出るような華やかな生活水準を保持することが試みられている。
第三の道(統合的な道、もしくは近代的な伝統の道)は、一連の建物に固有な現象をたぐりよせ、できるだけエネルギーを使わずに、最善の室内環境を達成することのうちにある。この種のプロジェクトは今日なお僅かしか見られないが、その場合、あらゆる環境に影響すると思われる要因と繊細にかかわり合うことは、喜びをもって観察される。きっとこの基盤の上に、人間と自然に呼応した建築が創造されるであろう。それは、傑出した建築物理的特性をもった天然素材からなる構造によって、僅かなエネルギー消費で、年間を通じて快適な室内環境を提供するに違いない。