屋根工事

断熱屋根

屋根裏が住居のために用いられるならば、1年を通して快適な室内環境を提供するためにいくつかの建築物理的な特性を考慮する必要がある。マッシブな組積構造の階と比べて、屋根は断熱材を仕込んだ軸組壁と同様に軽量な建築部位である。

 

①気密層

屋根面の断熱効果は、屋根全体の気密性に影響される。気密性のない屋根構造によって空気交換の割合が高い場合、暖房熱の要求は大変高くなるであろう。また気密性に欠けるジョイントによって、それ相応の天候状況においては著しい結露が発生することも考えられる(図3.8.12)。
正しく施工するためには以下の要請を満たす必要がある。

●気密層を断熱材の内側と外側に。それには軟質の木質繊維板、または大判の、互いに接着できる特殊紙からなるシートが適している。

●室内側の気密層の妻壁や床との接合は、接着テープもしくは接着剤により、もしくは構造的に釘打ちした木摺りの板によって気密性を確保する。

室内側の被に気密性がないために生じる水蒸気の対流による防湿層およびジョイント部の結露被害

②防湿層

断熱層の内側における防湿層は、断熱材が放湿性能をもっていないか(例:無機質系繊維板)、もしくは室内から高い湿気の発生が見込まれるときもしくは発生する結露があまりにも多いとき必要となる。防湿層は、その外側の屋根材および屋根下地材の透湿抵抗値の総計よりも5倍高い透湿抵抗値を有すべきである。
低い透湿抵抗値(Sp値3~5m)を必要とする構造の場合、内側にSp値2.5~4.0mの防風シートを2枚重ねて用いることで、防湿層とすることができる。

③夏の熱負荷

南面する屋根は、蓄熱性の乏しい軽量屋根の場合、夏期にはあっという間に室内が暑くなる。重い建築部位は室内の蓄熱性能を高めるために、夏の熱負荷を改善する可能性を有す
る。外気温の変動と日射は蓄熱体に蓄えられ、時間をずらしつつ、室内環境に好影響を及ぼす。単位荷重あたり、木材のような植物性の建材は、鉱物系の素材よりも2倍熱を蓄熱できる。
著者の体験からすると、重い断熱材(150kg/㎡、最低15cm厚さ)を重い内部の層(左官塗り1.5cmもしくは石膏ファイバーボード2枚張り)と重い内壁と組み合わせつつ使用することによって、冬期における僅かな暖房エネルギー消費と夏期における快適な室内環境をつくることができる。小屋裏における室内環境への決定的影響は、窓の位置、大きさである。

④断熱層と通気層

建築物理学的にみると、屋根構造は以下の点で区別される(図3.8.13)。
●断熱層の上に通気層がない屋根
●断熱層の上に通気層がある屋根

断熱層の上に通気層がない屋根の場合、通気は屋根仕上材の下のみで可能であり、断熱材は垂木の上部か、垂木間に充填する。水を受ける屋根下地は透湿性をもち、防水処理をした軟質の木質繊維板によって施工される。それによって断熱層の透湿性能は保証される。
断熱材の上に、第二の通気層を設けない場合、断熱された屋根構造(屋根窓、屋根面の開口、煙突、寄せ棟屋根)の施工は容易となる。
屋根材の裏面の通気を保証する瓦縦桟は最低5cmの高さをもつべきであり、通気が十分でない場合には、冬期に凍結の危険がある。
市場に出回っている「屋根上断熱システム」(ポリスチレンもしくは発泡ポリウレタン製)は、通気が十分ではなく、ジョイントの気密性が悪いために、結露や水蒸気の凍結を引き起こす。垂木上部の断熱の難しさは、断熱材を貫通して屋根瓦を固定するからである。断熱の上部の防湿層は慎重に施工する必要があり、さもなくばすぐに断熱材が湿ってしまう。

 

断熱層の上に通気層をもった屋根では、屋根材裏面の通気を含め、二層の通気層があり、断熱材は垂木間に設置される。通気層には給気と排気のための開口をそれぞれ軒と棟に見込んでおく。煙突もしくはトップライトなどと垂木の取り合いの部分では、通気の道を確保するように、特に注意する必要がある。さらに室内側に良好な蓄熱性能をもった建材の層を付加することによって、夏期の熱負荷が改善される。
十分な通気断面をもつ屋根は、滞留した熱をベンチレーションによって効果的に排出できるというメリットをもっている。それによって屋根面に対する温度負荷は軽減され、屋根構造や支持体における歪みの被害は減り、結露による被害の危険も逓減される。

屋根構造
断熱層の上に通気層のない軽量屋根(外断熱)
断層の上に通気層のある軽量屋根(木間に断熱材充填)
断熱層の上に通気層のない軽量(木間に断熱材)

⑤断熱材

断熱材として、炭化コルクパネル、アシパネル、木質繊維断熱材は、大きな屋根面において部材カットが少なく、それゆえ時間を節約して敷設できるために、垂木上部の断熱材として有利である。垂木の間には、作業手間のかからない粒状コルクや、セルロースファイバーのような吹き込み材が用いられる。ロール状の断熱材として、コットン、亜麻、羊毛が適しており、パネル状の断熱材として昨今、セルロース断熱パネル(製品名:Homatherm)が市場に出回っている。断熱材の厚さは、断熱条例に適応する必要がある。
建築部位別の断熱仕様として要請されている熱貫流率(k値0.22W/mK)を達成するために、今まで一般的であった断熱層の厚さは著しく増した。垂木間の断熱の場合、およそ18~20cmの断熱材が用いられるが、これは地域的に一般的に用いられている垂木高さ16ないし18cmにおいては、強制的に全面充填しなければならないことになる。垂木高さが十分ではない場合、断熱材を垂木下面にも施す。外断熱の場合、およそ16~18cmの断熱材が用いられる。