屋根工事

屋根の構造


屋根は、雨・風・雪を防ぎ、音が建築物内部に伝わるのを防ぎ、真夏の太陽を直接受けて、日差しを遮ってくれます。屋根があることで、私たちは、雨が降っても安心して暮らすことができます。家にとって重要な部分です。また、軒の出を大きくすることで、外壁への雨が掛かかりを少なくし、建物の耐久性を高めることができます。

遮熱材と通気層のある屋根

遮熱することで夏2階が暑くならない

真夏の夜も快適に過ごせる

屋根面に熱容量小さい断熱材を採用すると、断熱材に熱が蓄熱してしまう。このため、夜になっても断熱材から熱が放熱され、室内の温度は下がず、寝苦しい夜を過ごすことになる。熱容量の大きい断熱材を採用することで、断熱材に熱が蓄積されないため、夏の夜も快適に過ごせる。

屋根に通気層を設ける

物質に内外温度差ができると(つまり、断熱すると)空気中の水蒸気が冷やされ、結露水が発生します。これを防ぐのは物理的に不可能です。よく営業マンに結露しないと言われたと聞きますが、間違いか、ウソか、知らないのかです。 発生した水蒸気を外に逃がす対策が必要となりますが、それが通気です。 日本は欧米と比較すると夏暑い国です。そして海に囲まれていますからとても多湿な国です。そんな日本の家づくりは、何百年もの間、夏の暑さをしのぐ家をつくってきました。

 

近年、冬の暖かさを求めた家づくりになり、断熱材を入れるために壁は土壁からボード壁を使用するようにになり、柱の空間(壁の中)に断熱材を入れるようになりました。断熱をすれば内外に温度差が出ますから、壁内は結露しやすくなります。その対策は通気しかありませんが、現代建築で当たり前のように行われているのは、残念ながら屋根の場合は断熱材の外側のみ。仕上げ材の内側の通気が無視されています。壁の通気も断熱材の外側のみ。内側の通気が無視されています。これでは片手落ちですから、屋根は防水紙をめくると腐り、壁は窯業系サイディングを使った場合は、サイディングボードを腐らせてしまっています。

通気層を取ることで、屋根面の熱を排出する。

屋根仕上げと屋根の防水層の間に、通気層を設けます。夏季は、高温になった空気を、屋根の棟から外部に排気することで、屋根面から室内側に伝わる温度上昇を抑える効果があります。 夏季は、天井・壁・床・土間の表面温度が28℃になると心地良く暮らせます。

風圧差が発生することで空気の流れが生まれる

壁面だけの通気ではなく、屋根と連続した通気を取ります。地上30cm程度のところから、屋根の一番高い棟の部分まで、空気の通り道を作ります。太陽光により通気のエネルギーが発生し、上昇気流が生まれます。
通気層の幅をどのような寸法にするのか一般に18mmの幅を取っていますが、日射による熱負荷を減少するためには20mm以上の幅取る必要があります。東・南・西壁の場合です。また、断熱性を生かそうとする場合には18mmまたはそれ以下の寸法が良いのではないでしょうか。西壁をさらに積極的に通気する場合には、45~90mmの通気層を取ります。
もう一つは、風圧差が発生することで空気の流れが生まれます。風圧差を利用しようとする場合は、東西、南北の壁面を繋いでおいた方が有効です。同じ方位の壁面の上下に開口を開けてしまうと風圧差を利用できません。したがって、壁上部には開口を開けないようにするのです。これは、屋根面の上昇気流によって、壁面の通気を促進する仕組みにもなっているのです。

太陽熱を反射する屋根で夏の暑さを防ぐ

家の屋根と外壁に遮熱シートを張ると、夏の日射熱を反射し、冬の暖かさを外へ逃がさず反射できます。この時、遮熱シートの外側内側共に、20mm程の反射層を設ける事が重要です。直接張ると、逆に熱を伝える役割になってしまいます。最近、外部の透湿防水シートを銀色の物を使っているのを見かけますが、あれでは効果はあまり期待できません。しっかりとしたアルミシートを使う事が大事です。

真夏に駐車しておく自家用車のハンドルの上に敷くアルミのシートが遮熱シートです。クーラーボックスなどでもアルミ遮熱シートが役立っています。


このアルミ製の遮熱シートを家の屋根全面に取り付けます。夏の太陽の熱射を遮る効果は、まさに絶大です。

 

住宅用に開発されたアルミ遮熱シート。梱包用のプチプチシートの両面にアルミ箔を蒸着させています。

透湿防水シートで屋根のカビと腐食を防ぐ

現在建設されている日本の住宅の多くは、戦後から始まった現代工法で造られています。終戦後の焼け野原なった街の家不足を補う必要があったことから、新建材を用い、ローコストで工期を短縮することがミッションでした。日本古来から脈々と受け継がれてきた家造りが、途切れてしまったのです。そして、仮設的な現代工法は、いつしか誰もが考える時代の最先端の工法と信じられるようになりました。この現代工法は、シックハウスやアトピー、壁体内で発生するカビ、さらには木材の腐食、夏になると2階が暑い、といった多くの問題を抱えていたのです。 現代工法で造られる屋根には、大きな問題点が3つあります。

紙おむつと同じ性能を持つ透湿防水シートは、雨水の浸水を防ぎ、天井裏の“蒸れ”を防止する。

赤ちゃん用の紙おむつ

国産の防水透湿シートのほとんどのものは、紙おむつの技術でつくられています。薄いフィルムに水が通らず、水蒸気が通る穴を開け、不織布で裏打ちしたものです。

不織布タイプ
倍率200倍

不織布タイプ
倍率1500倍

フィルムタイプ
倍率200倍

フィルムタイプ
倍率1500倍

紙おむつと同じ性能を持つ透湿防水シートは、雨水の浸水を防ぎ、天井裏の“蒸れ”を防止する。

透湿抵抗(透湿性)は住宅内の湿気が透湿防水シートを通して、屋外に排出される機能で、㎡・s・Pa/μgの単位で表されます。数値が小さいほど湿気は多く屋外に放出され、壁体内の結露も起きにくくなります。防水性は、雨が透湿防水シートを通して住宅内に浸透しようとする圧力に耐える機能です。数値が大きいほど壁体内への雨水の浸入を防ぎます。

透湿防水シートは、電子顕微鏡写真で確認できるように、0.5μmの不織布の繊維同士の隙間、またはフィルムの微孔から、「透湿防水シート機能発現イメージ」図のように湿気が通過し、雨は遮断されます。

アスファルト防水シートは、気密性が高すぎて、水蒸気が抜けず、屋根裏がカビる。

屋根の結露は必ず起こります。屋根の防水シートは改質アスファルトルーフィングというシートを使用するのが一般的になっていますが、このシートは防止性は高いのですが全く透湿しません。屋根は一番温度が高くなる部位ですから、必ず結露が起きてしまい屋根の下地板を腐らせてしまいます。これはネットでもすぐに検索して見る事ができます。また、放射冷却現象時の屋根仕上げ材の裏側は必ず結露しています。これを繰り返せば屋根の板は腐食します。

これらを防ぐ方法として、透湿ルーフィングを使用します。透湿ルーフィングをただ張るだけでは結露対策とはならず、屋根板の上に張った透湿ルーフィングと仕上げ材の間に通気層を設け、結露を外に逃がす事が重要となります。通気層は断熱材の外側にも必要ですから、屋根はダブル通気となります。お客様は壁の通気だけ心配しがちですが、屋根が結露で腐ったりカビが生えた家で暮らせば、室内でカビの胞子を吸い込むという不健康な住宅となってしまいます。

どんな小さな水蒸気も通過できない、絶対に雨漏りのしないアスファルト防水シートは、現代工法の代表格といえるでしょう。屋根面にアスファルト防水シートを貼れば、雨漏りしないという魔法の防水シートとして、重宝されてきました。今では、日本の住宅で、アスファルト防水シートを貼っていない住宅を探すことが難しいくらいです。

しかし、
車のボンネットが結露している時は、アスファルト防水シートの上面と下面でも結露が発生していることが解かりました。上面の結露水は、雨水と同じように、流れてしまうので問題ありませんが、下面の結露水は行き場が無いので、垂木や下地の合板に染み込みます。カビが発生し、木部の腐食が始まります。

上部写真左側の透湿ルーフィングではきわめて良好な乾燥状態が継続しているのに対し、右側のアスファルトルーフィングでは、激しい結露が発生している。
引用資料 透湿ルーフィング協会のホームページ 東洋大学工学部建築学科土屋研究室による

屋根の形状

かつて人々は、気象状況と屋根材との関連性に対する知識を明確にもっており、建物は風景と調和した外見を呈していたものである。例えば、ギリシャの島々の白い石灰の陸屋根、地中海沿岸の石の住居における重厚な被い、アルプスの農家に見られるこけら葺き屋根、中部ヨーロッパにおける平瓦、スレート葺き、北海沿岸のわら葺き屋根、アシ葺きの屋根、ノルウェーやスウェーデンにおける木造住居の緑化屋根である。

私たちには、切妻屋根と寄棟屋根が馴染み深く、特に切妻屋根はその単純な構造ゆえ使われることが多い。付属建築や増築における、他の屋根形状は、片流れ屋根であり、コスト節約のために、多層階の連続住居の場合にも、用いられることが多い。

屋根の形状と呼び名
a 陸屋根 b 片流れ屋根 c 切妻屋根 d マンサード屋根 e 寄棟屋根 f 半切妻屋根 g マンサード寄棟屋根 h 方形屋根

屋根は、垂直の壁面との比較において、はるかに天候の影響を受けるために、一軒の住宅のうちで最も要求性能の多いところである。

屋根は、雨、雪、寒さ、騒音、火、夏の暑さから住宅を保護しなければならない。特に暗色の屋根材や蓄熱容量が少ない場合には夏の遮熱の対策が必要である。屋根そのものは視覚的に周辺環境に組み込まれ、またその個性的な外見をその住宅に与えるものである。

外皮としての屋根仕上げ材は、主に、雨、雪ヒョウといった天候の影響から室内を守る目的をもっている。わら、木皮、瓦、スレートこれらすべての被いは、うろこ状に重ね張りし、雨水を素早く排出する。屋根勾配がきつくなればなるほど、水(雨、露)の排出は早く、かつ良くなる。勾配5度以下と定義される陸屋根は、長い目で見ると、天候に対処するための厳しい要求には、慎重な施工が必要である。

明かり取り用のドーマーウインドー、ロッジアバルコニー等と屋根との取り合い部分は弱点であり、慎重な施工で屋根の被害を避けなければならない。たいてい、この部分はコストのかかるディテール処理を要する。

屋根の性能

屋根支持構造

小屋組はその支持構造によって区別される。
◆垂木小屋組
母屋組

垂木小屋組みと母屋組の力学的システム

垂木小屋組

垂木小屋組から、支持材のない小屋裏空間がつくられる。垂木は天井の梁(軒桁)の上にかかり、それと堅牢に固定される。総体的な屋根荷重はその場合外壁に伝えられる。あらゆる部分は完結した三角形としてのみ、構造的に安定することができるので、屋根面における開口(明かり取りのドーマーウインドー、天窓)をつくる場合には手間がかかる。

垂木小屋組の場合、垂木はスパンが4ないしは5m以上あるならば、棟木や二重(つなぎ)梁によって、第二の水平面で補強しなければならない。この二重(つなぎ)梁は大スパンの場合、桁や束で荷重を減できるが、支持材のない垂木構造の小屋裏空間は、それによって失われてしまう。奥行き方向のスパンの補強は、いわゆるプレースによって行う。その場合板材なり鉄筋が対角線上に、屋根面に敷設される。垂木小屋組は、屋根勾配40度を超えて用いられることが多い。

母座組

母屋組屋根の場合、屋根荷重は外壁によって吸収されるのみならず、奥行き方向の支持材・母屋を経て、束柱や方杖によって建築内部における支持体へ導かれる。この理由から、母屋屋根は柱や筋かいによって、自由な平面計画を妨げる。
この母屋組と垂木小屋組の両方の構造形式の特殊形、混合形、変形によって、屋根構造を形成する可能性は大きく広がる。様々な屋根形状は必ずしも構造に拘束されるものではないが、過去には地域性や風土と結ばれた典型的な形や構造が形成されてきた。例えば、
母屋組屋根はアルプス地方によく見られる形状であり、一般には45度以下の勾配である。勾配が急であると、大量の雪が滑り落ちて危険であるし、氷結落下も屋根をまきぞえにする危険がある。雪をためることは断熱効果にもなる。

 

一方、垂木小屋組屋根は構造的な理由から45度以上の勾配となるが、雨はすばやく流れ落ちる。垂木小屋組は三角形を構成し、安定していることから風荷重もさほど問題とならない。支持構造としての小屋組は、今日まで本質的に木材によってつくられてきた。トウヒは加工が容易であり、軽いにもかかわらず大きな荷重を受けることができる。出費の観点からみれば、手仕事的な木材の接合が優先されよう。というのも、むきだしになった構造部分における金属板やボルトによる接合はその木の接合箇所を集める危険性があるからである。その原因は、冷たい鉄部に生じる結露水にある。
通常の垂木の断面、16~20cm厚は、垂木間に断熱材を入れる場合に断熱材の厚さに制限を与える。スウェーデンやアメリカでは、この理由から、木製の合成葉、いわゆる型ビーム(商品名TJI)の使用が増えている。これはフランジにLVL、ウェブに合板等が使われているもので、工場で加工されたこの材料は、最も経済的な木材使用によって高い寸法精度、低自重、大きい耐荷重性を示す。ドイツでは、大スパンのときには、トラスも用いられる。その他の構造材、鉄、鉄筋コンクリート、鉄筋補強された気泡コンクリートを住居建築において用いることは稀である。力学的、防火的な理由から、これらの材料は主に商業建築において用いられるものである。